CONSTRUCTION CONTRACT DOCUMENTS
リフォームや改修工事を依頼するとき、「見積書に金額が書いてあり、施工業者へお願いしますと伝えたので、契約はできている」と考えている方は少なくありません。
また、工事請負契約書へ署名したことで、工事内容も金額の根拠も工事の進め方も、すべて決まったと思われていることがあります。
しかし、工事請負契約書、見積書、見積内訳書、工事工程表には、それぞれ異なる役割があります。この4点を一式で確認して初めて、何を、いくらで、いつまでに施工し、施工業者がどのような責任を負うのかが見えるようになります。
正式に工事を依頼するのであれば、次の4点は、そろっていて当たり前の契約図書です。
どれかがなければ、契約前に「提出してください」と求めることも当たり前です。業者を疑う行為でも、過剰な要求でもありません。
見積書と工事請負契約書は、どちらも工事に必要な書類ですが、同じ役割を持つものではありません。
見積書と見積内訳書が、工事内容と金額を示す。
工事工程表が、工事の順序と期間を示す。
工事請負契約書が、それらを含めた工事全体の責任を定める。
工事請負契約書に工事名、請負金額、着工日、完成日が書かれていても、「どの壁を撤去するのか」「どの材料を使うのか」「設備工事はどこまで含むのか」といった具体的な内容までは確認できません。
反対に、見積書へ工事項目が書かれていても、工期の遅れ、追加変更、損害、完成検査、引渡し、契約解除など、工事全体で問題が生じた場合の取扱いまでは決まりません。
CONSTRUCTION CONTRACT
工事請負契約書は、施工業者が契約した工事を完成させ、発注者へ引き渡すことを約束する中心的な書類です。
一般に、次のような事項を確認します。
工事請負契約書は、単に請負金額を確認する紙ではありません。見積書等で特定した工事を完成させる責任と、工事中に問題が生じた場合のルールを定める書類です。
見積書は、施工業者がどのような工事を行い、その工事全体でいくらになるのかを示す書類です。
ここで確認するのは、総額だけではありません。
ただし、「内装工事一式」「設備工事一式」と金額だけが書かれている見積書では、工事項目は分かっても、数量、単価、使用材料、施工範囲などの根拠を確認できません。そのため、見積書には見積内訳書が必要になります。
ESTIMATE BREAKDOWN
見積内訳書は、見積書に記載された各工事の金額が、どのように算出されたのかを確認するための書類です。
国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款(乙)でも、受注者が契約締結後、速やかに請負代金内訳書を発注者へ提出することが定められています。個人住宅などの小規模な民間工事でも、内訳書を確認することは特別な要求ではありません。
工事請負契約書に着工日と完成日が書かれていても、その間に何を行うのかは分かりません。
工事工程表では、一般に次のような流れを確認します。
実際の工事では複数の工種が重なって進むため、工事工程表は横棒で期間を示すガントチャート形式などで作成されます。
工事工程表があれば、工事の順序、職種の切替え、設備が使えない期間、検査の時期、完成予定などを発注者と施工業者が共有できます。
国土交通省の民間建設工事標準請負契約約款(乙)でも、請負代金内訳書とともに工程表を契約締結後速やかに提出することが定められています。
ONE SET OF CONTRACT DOCUMENTS
工事請負契約書、見積書、見積内訳書、工事工程表は、同じ工事について作成された一式の契約図書として、内容が一致している必要があります。
| 確認する関係 | 一致させる内容 |
|---|---|
| 契約書と見積書 | 工事名称、工事場所、請負金額 |
| 見積書と見積内訳書 | 工事項目、各金額、合計金額 |
| 契約書と工事工程表 | 着工日、完成日、引渡日 |
| 見積書と工事工程表 | 見積りにある工種が工程へ反映されているか |
さらに、見積番号、作成日、改訂日を確認し、どの見積書と内訳書を契約の対象にしたのか分かる状態にします。
図面や仕様書がある工事では、それらも4点と対応させ、使用材料、施工範囲、設備機器などが見積内容と一致しているかを確認します。
ASK BEFORE SIGNING
発注者が見積内訳書や工事工程表を求めることに、遠慮は必要ありません。
数百万円、場合によってはそれ以上の工事を依頼するのに、何へ支払うのか、いつ工事が終わるのかを確認するのは当然です。
契約内容を確認したいので、工事請負契約書と合わせて、最終見積書、見積内訳書、工事工程表をご提出ください。4点の工事名称、契約金額、工期が一致していることを確認したうえで契約したいと考えています。
これに明確な理由なく応じない場合は、施工業者が工事内容、金額の根拠、完成時期、説明責任をどのように考えているのか、契約前に確認する必要があります。
書類が不足したまま工事を始めると、問題が起きたときに、発注者と施工業者の認識が一致していたことを確認できません。
書類は、問題が起きたときだけ使うものではありません。工事を始める前に認識違いを見つけ、問題そのものを防ぐために必要です。
CHANGES AND ADDITIONAL WORK
契約後に工事内容を変更した場合、口頭での確認だけでは不十分です。
変更した工事内容、増減金額、工期への影響を整理し、必要に応じて次の書類を更新します。
当初契約だけを整えても、追加変更を口頭で進めれば、最終的な工事内容、請負金額、完成時期が再び分からなくなります。
工事請負契約書だけがあっても、具体的な工事内容と金額の根拠、工事の進め方までは確認できません。
この4点は、施工業者から特別なサービスとして出してもらう資料ではありません。正式に工事を契約し、発注者と施工業者が同じ内容を共有するための基本的な契約図書です。
4点がそろっていて当たり前。そろっていなければ、契約前に提出を求めて当たり前。それが工事契約の常識です。
工事請負契約書はあるものの、見積内訳書や工事工程表がない場合、又は書類ごとに金額や工期が異なる場合は、署名する前に内容を整理する必要があります。
大工のおっちゃん工房では、現場経験を持つ一級建築士が、工事請負契約書、見積書、見積内訳書、工事工程表の関係を確認し、契約前に施工業者へ確認すべき内容を整理します。
見積書に一式表記が多い場合や、工事範囲・追加工事・見積除外項目が分からない場合も、現在ある資料から確認できる範囲と、追加で提出を求める資料をご案内します。