新築・リフォームの引き渡しクレームで多い原因とは?施工不良より多い「思い込み」のトラブル

2026年06月10日 23:45




新築やリフォームの引き渡し時には、さまざまなクレームや相談が起こります。

私自身、これまで工事の引き渡し時に発生したクレームやトラブルについて、多数の相談を受け、解決に向けた整理や助

言を行ってきました。



その中で強く感じるのは、引き渡し時のクレームは、必ずしも施工不良や手抜き工事だけが原因ではないということで

す。

もちろん、明らかな施工ミスや確認不足、仕上げの不具合が原因となるケースもあります。



しかし実際には、施主側と施工側の「思い込み」や「認識の違い」が原因となっているケースが非常に多くあります。



「こうなると思っていた」

「ここまで含まれていると思っていた」

「説明しなくても分かっていると思っていた」

「図面を見れば理解していると思っていた」



このような双方の思い込みが、工事中には表に出ないまま進み、引き渡し時になって初めて問題として表面化します。


この記事では、施主側・施工側のどちらか一方を責めるのではなく、建築士の中立的な立場から、引き渡し時のクレーム

がなぜ起きるのか、そして事前にどのような確認が必要なのかをお伝えします。



引き渡し時のクレームは施工不良だけが原因ではない




新築やリフォームの引き渡し時のクレームと聞くと、まず施工不良や手抜き工事を想像する方も多いと思います。

たしかに、雨漏り、床鳴り、設備不良、建具の不具合、仕上げの乱れなど、明らかに施工上の問題が原因となるケースも

あります。



そうした場合は、施工内容や契約内容、保証の範囲などを確認し、必要に応じて補修や是正を求めることになります。

ただ、私が多くの相談を見てきた中で感じるのは、すべてのクレームが明確な施工不良とは限らないということです。

実際には、施工そのものに大きな問題があるというよりも、完成形に対するイメージが、施主側と施工側でズレていたと

いうケースが少なくありません。



つまり、問題の本質は、単純に「施工が悪い」「施主が細かい」という話だけでは判断できないのです。

建築士の立場から見ると、引き渡し時のトラブルは、施工不良かどうかだけでなく、どの段階で認識のズレが起きたの

か、どの思い込みが確認されないまま進んだのかを冷静に整理する必要があります。



圧倒的に多いのは「思い込み」と「認識の違い」




引き渡し時のクレームで圧倒的に多いと感じるのは、双方の思い込みです。



施主側は「当然こうなると思っていた」。

施工側は「当然分かっていると思っていた」。



この双方の思い込みが、工事中には表面化せず、完成後に初めて問題になります。



例えば、



「窓はもっと高い位置に付くと思っていた」

「収納はもっと使いやすいと思っていた」

「この仕上げ材は写真と同じ雰囲気になると思っていた」

「コンセントはこの位置で使いやすいと思っていた」

「この工事も見積りに含まれていると思っていた」



このような話は、実際の新築やリフォームでは珍しくありません。

施工側からすれば、図面や仕様書に書いてある内容かもしれません。



しかし施主側からすれば、図面に書いてあることと、完成後の状態を具体的に理解できていたことは別です。

ここに大きなズレがあります。



「言ったつもり」

「聞いたつもり」

「伝わっているつもり」

「分かっているつもり」



この“つもり”が積み重なることで、引き渡し時に「思っていたものと違う」という不満につながります。



施主は平面図や言葉だけで完成形を想像するのが難しい




まず大前提として、施主は建築の専門家ではありません。

平面図や立面図、仕様書を見ただけで、完成後の空間を正確に想像することは難しいものです。

例えば、図面上では同じように見える内容でも、実際に完成すると印象が大きく変わる部分があります。



  ・窓の高さ。

  ・収納の奥行き。

  ・段差の感覚。

  ・照明の位置。

  ・コンセントやスイッチの使いやすさ。

  ・仕上げ材の色や質感。

  ・部屋の広さの感じ方。

  ・家具を置いた時の動線。



これらは、施工側や設計側にとっては日常的な確認事項かもしれません。

しかし施主にとっては、完成して初めて気づくことがたくさんあります。



施工側が

   「図面に書いてあります」

   「打ち合わせで説明しました」

   「一般的にはこういう納まりです」


と言いたくなる場面もあると思います。

しかし、施主側からすると、図面に書いてあったことと、完成形を理解していたことは同じではありません。

ここを施工側が理解していないと、引き渡し時に大きな不満につながります。



特にリフォームの場合は、既存建物の条件や現場状況によって、完成形が想像しにくいことがあります。

壁を開けてみないと分からない部分、既存の配管や構造の影響を受ける部分もあります。

だからこそ、工事前や工事中に、できるだけ具体的に説明し、認識をそろえることが重要になります。




施工側にも「これくらい分かるだろう」という思い込みがある




施工側にも思い込みがあります。



     「これくらいは分かっているだろう」

     「図面を見れば理解しているだろう」

     「一般的な納まりだから問題ないだろう」

     「前にも説明したから大丈夫だろう」

     「この程度なら気にされないだろう」



建築に長く関わっていると、どうしても専門家側の感覚が当たり前になります。

しかし、施工側の当たり前は、施主側の当たり前ではありません。



工事をする側は、同じような納まりや工程を何度も経験しています。

一方で施主にとって、新築や大きなリフォームは、人生で何度も経験するものではありません。

ここには大きな温度差があります。



施工側がこの温度差を理解せず、「普通はこうです」「皆さんそうされています」「図面通りです」だけで進めてしまう

と、施主は置いていかれたように感じます。

もちろん、すべてを細かく説明することは現実的に難しい部分もあります。

しかし、施工側はプロです。



   ・施主がどこで誤解しやすいのか。

   ・どこを見落としやすいのか。

   ・完成後に不満が出やすい部分はどこなのか。



これをある程度予測し、先回りして説明する姿勢が必要だと思います。




打ち合わせ時に分からないことを、いい加減に答えない




引き渡し時のトラブルを防ぐうえで、もう一つ大切なのが、打ち合わせ時の対応です。

施工側や設計側が、打ち合わせ中に施主から質問を受けたとき、

分からないことをその場の雰囲気で答えてしまうことがあります。



   「たぶん大丈夫です」

   「おそらくできます」

   「普通は問題ありません」

   「まあ、何とかなると思います」



こうした曖昧な返答は、その場では話が進んだように見えます。

しかし、後になって実際にはできなかった、追加費用が必要だった、仕上がりが違ったとなると、

大きな不信感につながります。



施主側は、専門家から言われた言葉を信じます。

施工側にとっては軽い一言でも、施主にとっては「そう説明を受けた」という重要な判断材料になります。



だからこそ、分からないことは分からないと伝えるべきです。



その場で無理に答えるよりも、

   「確認してから改めて回答します」

   「一度持ち帰って、施工方法や費用を確認します」

   「現場条件を確認したうえで判断します」



と伝える方が、結果的には信頼につながります。



建築工事では、現場条件、構造、法規、設備、納まり、メーカー仕様などを確認しないと正確に答えられないことが多く

あります。



それを調べずに曖昧に答えてしまうと、後から「言った、言わない」「できると言われた」「費用内だと思っていた」と

いうトラブルになりやすいです。



打ち合わせで大切なのは、何でも即答することではありません。

大切なのは、正確に確認し、不確かなことを不確かなまま進めないことです。

分からないことを持ち帰るのは、恥ずかしいことではありません。



むしろ、誠実な対応です。

いい加減な即答でその場をごまかすより、確認してから正しく伝える。

その積み重ねが、引き渡し時のクレームを防ぎ、信頼関係を守ることにつながります。




施主側にも「当然こうなるはず」という思い込みがある




一方で、思い込みは施工側だけの問題ではありません。

施主側にも思い込みがあります。



   「注文住宅だから何でも自由にできる」

   「写真と同じように仕上がる」

   「打ち合わせで話したから当然反映されている」

   「専門家ならこちらの意図を汲み取ってくれる」

   「このくらいは費用に含まれている」

   「言わなくても分かってくれているはず」



こうした思い込みも、後々のトラブルにつながります。



特に最近は、SNSや写真共有サイトなどで多くの住宅事例を見ることができます。

イメージを共有しやすくなった一方で、写真の印象と実際の工事内容が一致しないこともあります。

写真では同じように見えても、材料、寸法、照明、施工方法、予算によって、仕上がりは変わります。



また、リフォームでは既存建物の制約もあります。

新築のように自由にできる部分ばかりではありません。

だからこそ、施主側も分からないことや不安なことは、早めに確認することが大切です。



   「これは含まれていますか?」

   「この写真と同じようになりますか?」

   「この部分は後から変更できますか?」

   「完成すると、実際にはどのように見えますか?」



こうした確認を遠慮せず行うことが、後々のトラブルを防ぐことにつながります。




打ち合わせシートは保身ではなく、認識合わせのために使うべき




最近は、打ち合わせシートや確認書を作成する施工店も多いと思います。

これは本来、とても大切なことです。

ただし、その使い方を間違えると、逆に不信感につながります。



打ち合わせシートは、施工側が後から「説明しました」「サインがあります」「記録に残っています」と言うためだけの

ものではありません。

本来の目的は、施主と施工側が、同じ内容を、同じ意味で理解しているか確認することです。



   ・書類を作ることが目的ではありません。

   ・サインをもらうことが目的でもありません。



大切なのは、その内容を施主が本当に理解できていたかどうかです。



例えば、打ち合わせシートに専門用語だけが並んでいて、施主が内容を十分に理解できていなければ、後からトラブルに

なる可能性があります。



施工側は、記録に残すだけではなく、



   「この内容で完成するとこうなります」

   「この工事は含まれますが、この部分は含まれていません」

   「ここは後から変更すると追加費用がかかります」



といった説明を加える必要があります。



一方で施主側も、打ち合わせシートや確認書にサインをする際には、分からない部分をそのままにしないことが大切で

す。



打ち合わせシートは、保身のための書類ではなく、双方が後で困らないための認識合わせの道具として使うべきだと思い

ます。




法律上問題がないことと、信頼を失わないことは別の問題




引き渡し時のトラブルでは、施工側から次のような説明が出ることがあります。



    「契約通りです」

    「図面通りです」

    「法律上は問題ありません」



もちろん、契約や法律は大切です。



何でも施主の希望通りに無償で対応すればよい、という話ではありません。

施工側にも、工期、予算、契約範囲、現場の都合があります。

できることとできないことは当然あります。

ただし、ここで大切なのは、法律上問題がないことと、信頼を失わないことは別の問題だということです。

施主が不満を持っているとき、そこには必ず何かしらの理由があります。



    ・施工不良なのか。

    ・説明不足なのか。

    ・思い込みなのか。

    ・認識違いなのか。

    ・契約範囲の理解不足なのか。



まずはそこを冷静に整理する必要があります。


最初から防御的に「図面通りです」「契約通りです」だけで終わらせてしまうと、施主は「自分たちの暮らしをちゃんと

見てくれていなかった」と感じてしまうことがあります。



住宅は、単なる商品ではありません。

施主にとっては、これから生活していく場所です。

だからこそ、施工側には、図面通りに作る技術だけでなく、施主がどう受け取るかまで想像する力が必要だと思います。




引き渡し時のクレームを防ぐために確認しておきたいこと




引き渡し時のクレームを防ぐためには、工事が終わってからではなく、工事前・工事中の確認が重要です。

特に次のような部分は、思い込みが起きやすいため注意が必要です。



・窓の高さ、位置、大きさ

・収納の寸法と使い勝手

・段差の有無

・照明器具の位置

・コンセント、スイッチの位置

・仕上げ材の色、質感、柄

・写真やパースとの違い

・契約に含まれる工事と含まれない工事

・追加費用が発生する工事

・後から変更すると費用が大きくなる部分

・口頭で決めた変更内容

・リフォームの場合の既存部分との取り合い



これらは、平面図や言葉だけでは伝わりにくい部分です。



必要に応じて、写真、サンプル、パース、現地確認などを使い、できるだけ具体的に確認しておくことが大切です。

また、変更内容や確認事項は、口頭だけで済ませず、記録に残しておく必要があります。

ただし、その記録は施工側が逃げるためのものではなく、施主と施工側が同じ内容を共有するためのものです。

工事前や工事中に、ひとつずつ思い込みをなくしていくこと。

これが、引き渡し時のトラブルを防ぐ一番現実的な方法だと思います。




建築士の中立的な立場から見た、引き渡しトラブルの本質




建築士の立場から見ると、引き渡し時のトラブルは、施工不良かどうかだけで判断すると本質を見誤ることがあります。

大切なのは、次の点を分けて整理することです。



・施工として本当に問題があるのか

・契約内容と違っているのか

・図面や仕様書と違っているのか

・説明が十分だったのか

・施主が完成形を理解できていたのか

・双方に思い込みがなかったのか

・変更内容が正しく共有されていたのか



どちらか一方を責めるだけでは、問題は解決しません。

施工側には施工側の事情があります。

施主側には施主側の不安や生活があります。

だからこそ、まずは感情的に判断するのではなく、どこで認識がズレたのかを冷静に確認することが大切です。



そして、そのうえで、施工不良として是正すべきものなのか、説明不足として整理すべきものなのか、追加工事として対

応すべきものなのかを判断する必要があります。

引き渡し時のクレームは、単なる不満ではありません。

その背景には、工事中に解消されなかった思い込みや認識違いが隠れていることが多いのです。




よくある質問

Q. 新築やリフォームの引き渡し時にクレームが起きる一番多い原因は何ですか?




明らかな施工不良や手抜き工事が原因になるケースもありますが、実際には施主側と施工側の思い込みや認識の違いが原因

になっているケースが多くあります。



「言ったつもり」「聞いたつもり」「伝わっているつもり」「分かっているつもり」といったズレが積み重なることで、

引き渡し時に「思っていたものと違う」という不満につながります。




Q. 図面通りに施工されていてもクレームになることはありますか?




あります。


図面通りに施工されていても、施主が完成後の状態を正確に理解できていたとは限りません。

平面図や言葉だけでは、窓の高さ、収納の使い勝手、段差、仕上げ材の質感などを具体的に想像することは難しいものです。

そのため、図面上は問題がなくても、完成後に「思っていたものと違う」と感じることがあります。




Q. 施工側が気をつけるべきことは何ですか?



施工側は、「これくらい分かるだろう」という思い込みをなくすことが大切です。

施主は建築の専門家ではありません。

図面に書いてあるかどうかだけではなく、施主がその内容を本当に理解できているかを確認する必要があります。

特に、完成後に不満が出やすい部分や、後から変更しにくい部分については、工事前や工事中に具体的に説明しておくこ

とが重要です。




Q. 打ち合わせ中に施工側が分からないことを即答しても大丈夫ですか?




正確に確認できていない内容を、その場の雰囲気で答えるのは避けるべきです。

建築工事では、現場条件、構造、法規、設備、メーカー仕様などを確認しないと判断できないことがあります。

分からないことは無理に答えず、「確認してから回答します」と伝える方が、結果的に信頼につながります。

Q. 施主側が気をつけるべきことは何ですか?




施主側も、「当然こうなるはず」という思い込みを持たないことが大切です。

分からないこと、不安なこと、写真やイメージと違いそうなことは、工事前や工事中に確認しておく必要があります。

特に、窓、収納、段差、照明、コンセント、仕上げ材、追加工事の範囲などは、思い込みが起きやすい部分です。




Q. 打ち合わせシートや確認書があれば安心ですか?




打ち合わせシートや確認書は大切ですが、それだけで安心とは言えません。

大切なのは、書類を作ることやサインをもらうことではなく、施主と施工側が同じ内容を同じ意味で理解しているかどう

かです。



打ち合わせシートは、施工側の保身のためではなく、双方の認識を合わせるために使うべきものです。

Q. 法律上問題がなければ、クレーム対応は不要ですか?




法律上・契約上問題がないことと、信頼を失わないことは別の問題です。

もちろん、何でも無償で対応すればよいわけではありません。

ただし、施主が不満を持っている場合は、施工不良なのか、説明不足なのか、思い込みなのかを冷静に整理することが大

切です。



最初から防御的に対応してしまうと、信頼関係が大きく損なわれることがあります。




Q. 引き渡し時のトラブルを防ぐにはどうすればいいですか?




工事が終わってからではなく、工事前・工事中に確認することが重要です

平面図だけで分かりにくい部分は、写真、サンプル、パース、現地確認などを使って、できるだけ具体的に確認しておくことが大切です

また、変更内容や確認事項は口頭だけで済ませず、記録に残しておく必要があります

その記録は、後から責任を逃れるためではなく、双方が後で困らないための認識合わせとして使うべきです

まとめ|引き渡し時のクレームを防ぐには、思い込みをなくす確認が必要




新築やリフォームの引き渡し時に起きるクレームは、施工不良だけが原因ではありません。

圧倒的に多いのは、施主側と施工側、双方の思い込みや認識の違いです。



施主は建築の専門家ではありません。

平面図や専門用語だけで、完成形を正確に想像することは難しいものです。



一方で施工側も、「これくらい分かるだろう」「図面を見れば理解しているだろう」という思い込みを持ってしまうことがあります。

引き渡し時のトラブルを防ぐために必要なのは、施工精度だけではありません。



 ・説明

 ・確認

 ・記録



そして、相手が本当に理解できているかを想像すること。

法律上問題がないことと、信頼を失わないことは別です。



家づくりで大切なのは、揉めた後に守るための書類ではなく、揉めないために、事前に思い込みをなくしていく姿勢では

ないでしょうか。







記事一覧を見る