2025年の建築デザインは、「なんとなくオシャレ」というレベルでは終わりません。
どのスタイルにも、
・得意としているハウスメーカーの“設計思想”
・そのデザインが似合う住む人の価値観
・色・素材・光の使い方の“本質”
がはっきりと表れています。
この記事では、
「メーカー → トレンド → 夢のある風景 → こうするといい → NG」
という順で進めます。
読者は“何を選べば自分らしい家になるのか”を、
自然と理解できる流れにしています。
―― 木の表情が好きな人に。静けさを贅沢に楽しむ家。
■ メーカーの特徴
住友林業は、“木の見せ方”が国内で最も上手いメーカー。
木目の量やトーンを丁寧に調整し、
「木が主役の家」をつくるのが得意です。
木が好きで、自然素材の空気感の中で暮らしたい人にぴったりです。
■ 相性のよい2025年トレンド
木と相性抜群なのが、
北欧×和の融合スタイル「JAPANDI(ジャパンディ)」。
・生成色の壁
・淡いバーチ材
・低めで丸い家具
・陰影を使った柔らかい光
・小さな中庭の緑
木が主張しすぎない“静けさのデザイン”が、住友林業の家とよく馴染みます。
■ 夢のある風景
朝、まだ家族が起きてこない時間。
生成の壁にやわらかな光が広がり、バーチの床が静かに輝いている。
ダイニングテーブルは角の丸い木製。
窓の外の中庭では、小さな葉が朝風に揺れ、影がゆらゆらと床に落ちる。
主張の強いものは何もないのに、
“ここに長く住みたいな”と思わせる余韻がある。
■ ④ こうするといい(設計の芯)
JAPANDIは、「木を見せる場所」と「木を減らす場所」を分けると極まります。
・壁は白〜生成で、床・天井の木を際立たせる
・木を“面”ではなく“帯”として見せる
・窓の上下ラインを揃え、水平の美をつくる
・光源を隠し、陰影だけで空気をつくる
・家具は丸み、布は生成、色は3色以内
夜は、壁をなでるような柔らかい照明を使うと、木の陰影が豊かになり心が落ち着きます。
■ NG(ヒント程度に)
黒を多用しすぎると、“モノトーンモダン”に転落。
JAPANDIは「淡い色+木の軽さ」が命。
―― 旅館のような落ち着きが欲しい人へ。
■ メーカーの特徴
積水(シャーウッド)は、
深い軒・水平ライン・陰影の演出が上手いメーカー。
旅館のような“凛とした佇まい”を住宅スケールに落とし込む力があります。
■ 相性のよい2025年トレンド
2025年の和モダンは、
“黒格子”の時代を終え、
・墨色
・白木
・土色
・スリット光
・地窓の帯
で魅せる “静謐系の和” が主役。
これは積水の得意な「陰影×木」の表現と非常に相性がよい。
■ 夢のある風景
夕方、玄関の扉を開けると、
細長い地窓から苔と石の庭が切り取られている。
足元にはやわらかな光が灯り、
白壁と墨色の塗壁がゆっくりと陰影をつくる。
家に入った瞬間、旅先の宿に来たように心が落ち着く──
そんな空気をつくれるのが積水の和モダン。
■ ④ こうするといい(設計の芯)
和モダンは“影の主役を決める”ことから始める。
・リビングの正面壁、階段壁、吹き抜け壁のどれかを主役に
・墨色や土色の塗り壁で“影が映える面”をつくる
・窓は地窓・横長FIXを主体に“庭の帯”を切り取る
・濃い木ではなく、ミドルブラウン〜白木を中心に
・光は天井から落とさず、壁・足元からにじませる
これだけで、“和の静けさ”が家全体に染み渡る。
■ NG(ヒント程度)
黒の使いすぎは重さだけが残る。
和の本質は「暗さ」ではなく「陰影の階調」。
―― 明るくてあたたかい家を求める人に最適。
■ メーカーの特徴
一条工務店は 性能重視で冬も暖かい家づくり が特徴。
室内は白を基調に整えやすく、収納も多く、
北欧ミニマルと非常に相性がいい。
■ 相性のよい2025年トレンド
2025年の北欧は、
白一色ではなく
・アイボリー
・生成
・ライトオーク
・曲線家具
・柔らかい面光源
を使った“やさしい北欧”。
■ 夢のある風景
冬の朝。
外は雪景色なのに、室内はほんのりあたたかい。
アイボリーの壁に朝日が広がり、
丸いテーブルに家族が集まる。
ライトオークの床と淡いグレーのソファが、
やさしい空気をつくり出している。
「寒いのは外だけでいい」
そんな家。
■ ④ こうするといい(設計の芯)
北欧ミニマルは“白すぎない”ことが重要。
・壁紙は真っ白ではなく、ごく淡いクリームやグレージュ
・家具は角を減らし、曲線をひとつ以上入れる
・収納扉は壁の色と揃えて“存在を消す”
・光は点光源より“面光源”を使う
・布小物で温度感を出す(生成、淡グレー、ベージュ)
そして、一条の性能を活かすなら、
「窓から光を取り込みつつ、影が優しく落ちる位置」に家具を置く。
北欧の“暮らしのあたたかさ”が自然に出ます。
■ NG(ヒント程度)
金属脚の家具だらけは冷たく見える。
白×白×白は“実験室”のようになりがち。
―― “何もない美しさ”に惹かれる人向け。
■ メーカーの特徴
ヘーベルハウスは、
四角く端正なフォルムと、無駄を削ぎ落とした外観が特徴。
都会的・硬質・シャープな家を求める人に合う。
■ 相性のよい2025年トレンド
“無機質”ではなく、
生活感を消して美しさをつくるシンプルモダン。
・壁と収納が一体
・巾木を消す
・石目の中間色
・ガラスと金属を少しだけ
・線を揃える
ヘーベルの直線美と非常に相性がよい。
■ 夢のある風景
夜帰宅して玄関を開けると、
足元にだけやわらかな間接照明。
廊下は“白い壁”ではなく、“白と影の帯”。
リビングへ進むと、窓の向こうの夜景が切り取られ、
グレーのソファが静かに浮かんで見える──。
「物がない」ことが、最高の贅沢になる家。
■ ④ こうするといい(設計の芯)
シンプルモダンは“生活を隠す技術”が命。
・収納は全部「壁面一体化」で、扉の存在を消す
・巾木はなくすか、極細に
・家電は見せない収納へ
・壁・床・天井のラインを揃えて“ノイズを消す”
・光は壁際に寄せて、影をデザインする
ヘーベルの構造と相まって、
“動と静”のメリハリがある住まいになる。
■ NG(ヒント程度)
収納計画なしで進める=必ず失敗。
物が出ると、モダンは一瞬で崩壊する。
―― 明るくて軽くて、休日みたいに暮らしたい人向け。
■ メーカーの特徴
ハイムは、整ったグリッド構成と効率のいい家事動線が得意。
「明るさ・陽気さ・気軽な雰囲気」が似合う。
■ 相性のよい2025年トレンド
昔の“ラフすぎるサーフ系”ではなく、
白×ナチュラルウッド×淡いブルーの、洗練サーフ。
■ 夢のある風景
休日の朝、窓を開けると風がふわっと抜ける。
白い壁に淡い光、明るい木の床。
薄いブルーのソファと、テラスの観葉植物が揺れる。
リビングと庭がひと続きのように感じられ、
どこかの海沿いに住んでいるような空気。
■ ④ こうするといい(設計の芯)
サーフ系成功の鍵は“軽さ”と“通り道”。
・室内と外を繋ぐ「フラットな大開口」
・床はナチュラルオーク一択で“軽さ”を出す
・テラスと室内を同系色にして連続性をもたせる
・家具はブルー・白・淡木で3色以内
・ラタン・布・無垢の軽い素材を中心に
・光量は控えめで“夕方のカフェ”のような落ち着き
これだけで、
「いつまでも家にいたくなる空気」が生まれる。
■ NG(ヒント程度)
狭い部屋に古木や濃ブルーを詰め込みすぎない。
素材を足しすぎると、サーフではなく“雑”になる。
5大メーカーの指向性と、2025年のデザイントレンドは、
実はきれいに噛み合っている。
・木の美しさを味わいたい → 住友林業 × JAPANDI
・旅館のような静けさがほしい → 積水 × 静謐系和モダン
・明るく温かい暮らし → 一条 × 北欧ミニマル
・都会的で洗練された箱が好き → ヘーベル × シンプルモダン
・休日のような軽さが欲しい → ハイム × サーフ
そして最も大切なのは、
「こうするといい」=“設計の芯”を知ること。
ここが分かれば、どんなデザインでも“自分の世界”にできます。
この記事は、
これから家を建てる人にも、
すでに検討中の人にも、
「失敗しない選択軸」と
「夢のある未来の風景」を届けるための一冊です