2026年3月、日本の住宅政策はかつてない矛盾に直面しています。
これまで「不動産は資産」と言われてきましたが、
今やそれは、国が決めた高い環境基準を維持し続けなければならない「終わりのない義務」へと変貌しました。
私たちが直面しているのは、最新スペックを強要する「ZEH義務化」と、古い資産を容赦なく削る
「空き家増税」による挟み撃ちです。
国は今、新築に対して厳しい省エネ基準(ZEHレベル)を課し、住宅の高性能化を推し進めています。
しかしその一方で、既存の「古い家」には、適切な管理がなければ増税という罰則を突きつけています。
矛盾の核心:
住宅性能の基準を上げすぎて建築費を爆騰させておきながら、一方で維持が困難な古い家には罰則を与える。
この二段構えにより、中間層が「自分の身の丈に合ったペースで家を持つ」ことは事実上不可能になりました。
奪われる「スローライフ」:
「今はとりあえず購入しておいて、将来ゆっくり時間をかけて直して住もう」という、かつての豊かな発想は、税制によ
って「コストを垂れ流す負債」へと塗り替えられてしまいました。
本来、建築業界は「スクラップ&ビルド(壊して建てる)」から「ストック活用(長く使う)」への転換を
掲げていたはずです。しかし現実はどうでしょうか。
「管理不全」のレッテル:
少しでも修繕が滞れば「管理不全空き家」として指定され、固定資産税の優遇(住宅用地特例)が解除されます。
これにより土地の税金は最大6倍に跳ね上がります。このプレッシャーは、オーナーに「直して使う」よりも
「いっそ壊した方がマシ」という判断を加速させています。
性能不足という名の排除:
ZEHという最新スペックを至上命題とするあまり、まだ十分に住める既存建物を「性能不足」という理由で市場から追い
出している。
これこそ、建築文化としてこれ以上ない「本末転倒」と言わざるを得ません。
「住宅ローンを完済すれば、老後の住まいは安泰」という神話は、2026年の今、完全に崩壊しました。
終わらない維持費の戦い:
ZEH住宅は、高度な機械設備(太陽光発電、蓄電池、高効率空調)に依存しています。
これらは10〜15年周期で高額な交換費用が発生します。
資産から負債への転落:
完済後も続く設備の更新費用と、厳しい管理責任に伴う増税リスク。
住宅はもはや、家族を守る「城」ではなく、国が決めた基準を維持し続けるための「コストセンター」となっているので
す。
この不条理な状況下で、私たちはどう動くべきでしょうか。
ただ国のルールに踊らされるのではなく、自衛のための選択肢を持つ必要があります。
・「持たない」という賢明な選択
資産価値が維持できないと判断すれば、あえて賃貸に徹する、あるいは資産価値に依存しない極小の住まいに流れる。
・「性能の自衛」とローテクへの回帰
国のZEH基準(機械依存)に振り回されず、断熱材の厚みなど「壊れない部分」に投資し、
設備に頼りすぎない長持ちする独自のメンテナンス術を確立する。
・「政治的・社会的発言」による変革
空き家の「利活用」に対する一律の罰則ではなく、個別の事情やDIYによる段階的な改修を認めるような
緩和を求めていく。
「良質な住宅を次世代へ」という言葉の裏で、個人の所有の自由が税金と基準によって縛り上げられています。
今、私たちが考えなければならないのは、「国が強要する高性能」ではなく、
「自分たちが本当に維持し続けられる豊かさ」の再定義ではないでしょうか。