熊本地震で分かった「構造計算しても壊れる家」の共通点

2026年02月19日 16:03




― 2026年法改正前に知っておくべき“設計の入口” ―



2016年の熊本地震では、許容応力度計算を行っていた新築木造住宅が実際に崩壊しました。

「構造計算をしていれば安心」という常識は、必ずしも正しくありません。



では何が足りなかったのか。

答えはシンプルです。結果の数値ではなく、“どんな前提で計算を始めたか”という設計の入口です。




第1章|なぜ“計算済み”でも壊れたのか




熊本地震後の調査で分かったのは、多くの倒壊住宅が「計算ミス」や「手抜き」で壊れたわけではない、という事実で

す。

壁量は基準を満たし、許容応力度計算も成立。法的には問題のない建物でした。



それでも壊れた。



理由は、力の流れが素直でない計画だったこと。

計算は通っても、建物として“無理をしている構造”が、実地震で想定外の壊れ方をしたのです。




第2章|直下率を無視した設計の代償




建物の荷重は、柱を通って基礎へ、地盤へと真っ直ぐ流れるのが理想です。

これが「直下率」が取れている状態。



ところが、大きな吹き抜けや広いLDKで柱の直下が切れていると、荷重は梁が肩代わりします。

梁は柱より変形しやすい。荷重が集中すれば、たわみが先に起きる。



計算上は梁を太くすれば成立します。

しかし実地震では、変形が先に進行し、その変形が破壊の引き金になります。



熊本地震で起きたのは、この「変形先行型」の破壊でした。




第3章|偏心率が示す“揺れ方の偏り”




平面計画が左右非対称だと、地震時に建物はねじれるように揺れます。

これが偏心。



偏心率が大きい建物は、壁量が足りていても、一部に力が集中します。

結果として、想定外の部位から損傷が始まる。



許容応力度計算は有効です。

しかし、偏心や直下の評価を入口で見ていない計画では、数値だけ整っても危うい。




第4章|「部材を強くすればOK」という錯覚




設計の現場では、数値がNGなら部材を強くします。

梁を太くする。金物を増やす。壁を追加する。



すると、計算上は「OK」になる。



ですが建物は、数字で立っているわけではない。

変形の連鎖、接合部の挙動、施工誤差。

実地震は、計算書の想定を超える“連続現象”です。



熊本地震が示したのは、

強い部材=壊れない家ではないという事実でした。




第5章|2026年法改正で起きる“見えにくい危険”




2026年4月、4号特例の縮小が完全施行されます。

構造図面を扱う設計者は増え、許容応力度計算も一般化します。



一見すると安全性は上がる。



しかし同時に、



   ・計算ソフトに依存する設計

   ・経験よりもスピード優先の設計

   ・「通ればOK」という判断



が広がる可能性もあります。



資格の問題ではありません。

問われるのは経験値と入口設計の視点です。




第6章|構造計算で本当に見るべきもの




構造計算で重要なのは、



  ・偏心率はどうか

  ・直下率は確保されているか

  ・吹き抜け下の荷重経路は説明できるか

  ・変形をどう抑えているか



という入口の評価です。



結果の数値ではない。



「なぜこの柱がここにあるのか」

「なぜこの梁で持たせているのか」



そこまで説明できる設計かどうか。




結論|熊本地震は“過去”ではない




熊本地震で崩壊したのは、違法建築ではありませんでした。

合法で、計算済みの新築住宅でした。



壊れた理由は一つ。



見るべきものを見ないまま、計算をしてしまった。



2026年以降、構造計算はさらに一般化します。

だからこそ、施主も設計者も問われます。



「計算しているか」ではなく、

「どんな前提で計算しているか」を。



耐震は数値の問題ではありません。

設計の入口の問題です。




記事一覧を見る