住宅の打ち合わせの中で、
「構造計算は行っています」
「許容応力度計算までしています」
という説明を受けることがあります。
この言葉を聞いて、不安を感じる方は多くありません。
また、意匠を中心に設計を行っている建築士の方にとっても、
計画を進めるうえで十分な説明に感じられることが多いと思います。
ただし、ここには少し注意が必要です。
許容応力度計算を行っていることと、
耐震・耐風まで含めて構造を検討していることは、必ずしも同じではありません。
この記事では、
「構造計算とは本来どのような内容なのか」
「なぜ耐震や耐風を含めなくても計算が通ってしまうのか」
について、できるだけ分かりやすく説明します。
構造計算とは、建物にかかる力を想定し、
その力に対して建物が安全に成り立っているかを確認する作業です。
住宅であっても、建物にはさまざまな力が作用します。
建物そのものの重さや、人や家具の重さだけでなく、
地震による揺れや、風によって横から押される力も無視できません。
構造計算では、これらの力を数値として設定し、
柱や梁、基礎、接合部などが無理なく耐えられているか、
また変形が過大にならないかを確認していきます。
ここで重要なのは、
どの力を前提として計算に含めるかは、設計側の判断に委ねられている
という点です。
許容応力度計算は、柱や梁などの部材に生じる力が、
材料として許容できる範囲に収まっているかを確認する計算方法です。
部材ごとに応力度や変形を細かく確認できるため、
構造計算の方法としては精度が高く、信頼性のある手法です。
ただし、許容応力度計算は
与えられた荷重条件に対してのみ成立する計算です。
たとえば、地震による水平力や、
風による水平力を前提条件として設定しなければ、
それらに対する検討は計算の中に含まれません。
実務上、耐震や耐風を積算基準として明示的に加えなくても、
許容応力度計算は成立します。
長期荷重を中心とした条件で計算を行い、
柱や梁が数値上耐えられていれば、
計算書としては整った形になります。
確認申請も通りますし、
「許容応力度計算を行った住宅」として説明することも可能です。
これは制度上の問題点であり、
計算が間違っているという話ではありません。
本来、構造計算は
「計算が通るかどうか」を確認するためだけのものではありません。
地震が起きたときに、建物の中でどのように力が流れるのか。
強風を受けた際に、どこに負担が集中しやすいのか。
そうした点を踏まえたうえで、
その計画が構造的に無理をしていないかを判断するためのものです。
耐震や耐風を前提に含めない計算では、
こうした判断が十分にできません。
私は、2階建てまでの一般的な木造住宅であっても、
耐震と耐風を積算基準に含めたうえで、許容応力度計算を行っています。
特別に厳しい条件を設定しているつもりはありません。
それが、構造計算を行ううえでの基本的な前提だと考えているからです。
耐震・耐風を含めて計算することで初めて、
その計画が木造在来工法として無理をしていないか、
間取りや空間構成に構造的な負担が生じていないか、
工法を見直す必要がないかを判断できます。
この違いが分かりやすく表れるのが、
必要以上に広いLDKや、1階に大きな開口を持つインナーガレージです。
耐震や耐風を前提に含めて計算すると、
木造では構造的に厳しいという結果が出ることがあります。
その場合、本来は
間取りの見直しや、構造形式の再検討が必要になります。
しかし、耐震・耐風を含めていなければ、
梁や柱を大きくすることで、
数値上は許容応力度計算が成立してしまうことがあります。
「許容応力度計算を行っています」という説明だけでは、
耐震や耐風まで含めて検討されているかどうかは分かりません。
どのような前提条件で構造計算を行っているのか。
そこまで確認しなければ、
計算の中身を正しく判断することはできません。
構造計算は、
計画を正当化するためのものではなく、
計画が妥当かどうかを判断するためのものです。
私は、耐震・耐風を含めた構造計算を行うことが、
本来あるべき構造検討の姿だと考えています。
そうしなくても計算が通ってしまう現実があるからこそ、
この点について注意喚起を行いたいと考えています。