2025年、不動産業界では「200㎡以下の用途変更なら確認申請が不要になり、旅館業のハードルが下がった」と盛んに言
われています。しかし、実務で図面を引いている立場から言わせれば、これは極めて危険な誤解です。
手続き上の「建築確認」は不要になっても、消防法や自治体の条例、そして建築基準法そのものの中身(工事基準)は、
むしろかつてないほど厳格化しています。 緩和という言葉を鵜呑みにして物件を買った後、保健所や消防の窓口で「数百
万円の追加改修が必要だ」と突き放される投資家が後を絶ちません。
あなたが「失敗する投資家」にならないために、今まさに現場で起きている「300万円の境界線」を解説します。
素人の投資家は「少しでも広い方が客に喜ばれる」と考えがちですが、実務を知るプロは**「99㎡」**という数字を絶対
に死守します。なぜなら、100㎡を超えた瞬間に、あなたの財布から強制的に現金を奪い去る「課金システム」が発動する
からです。
① 消防法:有線工事か、無線工事か
・100㎡未満: 簡易的なワイヤレス警報器(数万円)で済みます。
・100㎡以上: 本格的な「自動火災報知設備」が義務。壁を剥がして家中を配線し直す工事と、巨大な受信機の設置で、
100万円単位のコストが上乗せされます。
② 福祉条例:車椅子トイレが「収益」を食いつぶす
多くの自治体では、旅館業の面積が100㎡を超えると、バリアフリー適合義務が発生します。
・現実: 車椅子が回転できる巨大なトイレや、玄関スロープの設置が必須となります。
・損失: その設備を作るために、本来なら客室にして宿泊料を稼ぐはずだったスペースが潰されます。3畳分広いだ
けのせいで、数百万円の工事費を払い、さらに将来の売上まで失うのです。
これまで「2階建てなら、3階建てのような厳しい防火対策はいらない」と思われてきました。しかし、2025年4月の改正
以降、その常識は捨ててください。
実務の現実: 旅館業として2階を寝室にする場合、階段を「燃えない壁と扉」で囲う「竪穴区画(たてあなくかく)」が
厳格にチェックされます。
後付けの地獄: お洒落な吹き抜け階段に、後付けで防火扉やシャッターを設置すれば、見た目は台無しになり、コストは
50〜100万円飛びます。2階建てであっても、「住宅仕様のまま」では許可は下りない時代なのです。
2025年4月の改正で、リフォーム時の「構造計算」が厳格化されました。これにより、古い物件を旅館にする場合、現在
の基準に合わせた耐震補強が必要になるケースが増えています。
古い物件の罠: 用途変更の際、突然300万円以上の耐震補強費用が要求され、投資計画が破綻します。
等級3の無敵性: 最初から**「耐震等級3」の証明がある築浅物件を選べば、この補強コストは「完全にゼロ」**。浮い
たお金を、ゲストが喜ぶ最新の設備に回すことができます。
一方で、2025年のルール変更には大きな武器もあります。それが「採光(窓)の緩和」です。
逆転の発想: かつては窓が小さくて「物置」にするしかなかった部屋。最新ルールでは、照明設備を整えれば「客室」と
して認められるようになりました。
勝ち筋: 「100㎡以下の物件」の中で、この緩和を使い切って客室数を最大化する。 これこそが、無駄な工事費を払わず
に利回りを最大化させる、現代の錬金術です。
最後にお伝えしたいのは、2025年の旅館業投資において、あなたの成否を分けるのは「物件の広さ」ではなく、「境界線
を見極める知識」だということです。
「200㎡まで緩和」という言葉は、単に手続き上の話に過ぎません。中身(工事基準)はかつてなく厳しく、特に100㎡を
超えた瞬間に投資難易度は跳ね上がります。
もし、あなたが今検討している物件が「101㎡」なら、迷わず壁を動かして、クローゼットの一部を外部物置にするなどし
て、「99㎡」に落とすべきです。 その判断ができるかどうか、図面1枚の修正で300万円の無駄な出費を削れるかどうか
が、あなたの利益を守る唯一の分かれ道なのです。