DIYで旅館業を始めたい方へ まず“家の基本”を整えるところから考えてみませんか

2025年12月10日 11:19



申請は建築士、家を整えるのは大工──。

どちらも欠かせないからこそ、最初に見るべきは建物そのものの状態です

1. DIYで旅館業を目指すときに起こりやすい誤解




近年、「DIYで古い家を直し、旅館業として活用したい」というご相談を多くいただきます。

DIYの楽しさも、古い家を残したいというお気持ちもよく分かります。



しかし、こうした相談でしばしば見られるのが、


  ・旅館業=申請をどう通すか

 ・旅館らしい内装にすれば近づく


といった“表面だけ”に意識が向き、

肝心の家そのものの状態を見落としてしまう点です。



旅館業だから特別な工事が必要になるわけではありません。

まずは建物の基本が整っていること。これがすべての前提です。




2. 古い家は「見えている姿」と「本当の姿」が違う




DIYを進めていたある相談者の方は、途中で連絡が途絶えました。

そして約1か月後に届いたのは、一言だけのメッセージ。



「従います」


DIYの最中に、“見えていなかった部分” が現れたのだと思います。


古い家の場合、外観が整っていても内部の状態は別問題です。


  ・木が乾燥して縮んでいる

  ・工法が年代ごとに混在している

  ・力の流れが複雑になっている

  ・過去の工事の影響が残っている



こうした複合要素により、図面だけでは判断しきれない状況が必ず出てきます。


DIYが途中で止まる原因は、

腕前ではなく 判断に必要な情報が不足しているため です。




3. 最初にやるべきことは「家をまっすぐに戻すこと」




家は、柱などの“線”、そして壁や床といった“面”で構成されています。


線がズレれば面がズレ、

面がズレれば、その上に作るすべてが影響します。



その結果、

   ・建具の建て付けが決まらない

   ・床が波打つ

   ・壁がふくらむ

   ・寸法がそろわない



といった現象が起こります。


これは技術の問題ではなく、

基準線が無い状態で作業を始めていることが原因です。



だから私は、まず

・水平

・垂直



家の芯となる基準線


を整えます。



木の癖を読み、補強すべき位置を決め、添え柱で軸を戻す作業です。

ここが整うと、その後の工事は驚くほどスムーズになります。




4. 基本が整うと、DIYより無駄が出ない理由




基準が一本通るだけで、材料は素直に納まるようになります。


  ・無駄なカットが減る

  ・調整作業がいらない

  ・やり直しがほとんど発生しない

  ・材料ロスが激減する



これが、プロが直すとDIYより安く、早く終わることがある理由です。


努力の差ではありません。


“整っていない家”の上で作業を始めるのか、

“整えてから”作業を進めるのか──

ただそれだけの違いです。




5. 建築士と大工──両方の視点が必要になる理由




旅館業の申請には建築士の判断が必須です。

一方、古い家を直すには大工の判断が欠かせません。



だからこそ、旅館業×DIYの相談は複雑になりやすいのです。


  ・法規の基準を満たせるか

  ・既存の構造が耐えられるか

  ・どこから直すべきか

  ・作業の優先順位はどこか


申請と現場判断が行き来するため、片方だけでは前に進みません。



私は建築士として基準を整理し、

大工として現場を読みながら補強できます。



その両方を扱える立場だったからこそ、

今回のような複雑な案件でも、迷わず目的地へ案内できたのだと思います。




6. おわりに:DIYを否定するわけではありません




DIYには、つくる喜びがあります。

しかし、旅館業のように「人が泊まる建物」では、

まず家の基本を整えることが何より大切です。



そこが押さえられていれば、

DIYでもプロでも、結果は必ず良い方向へ向かいます。




7. リノベ相談




建物の状態を確認してから動きたい方へ。


旅館業・用途変更・古民家再生など、

「申請」と「現場」が同時に絡むご相談にも対応しています。



▶ リノベ相談はこちら

https://www.daikukoubou.com/p/9/


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