2026年、旅館業はどこへ向かうのか —— “訪日客の本音” から読み解く宿の未来像

2025年12月05日 22:01




2025 年を境に、宿泊業の流れは静かに、しかし確実に変わりつつあります。

予約件数やインバウンドの回復だけでは測れない、「旅の目的」そのものの変化が起きているからです。



私は建築・宿泊施設のコンサルとして、多くの宿主や施工店から相談を受けてきました。

また、独自に収集した訪日客アンケートでも、はっきりとした傾向が出ています。



結論を先に言えば、

2026 年以降の旅館業は “世界観に惹かれて泊まる宿” が勝ち、和モダンを並べただけの宿は確実に埋没します。



なぜそうなるのか。

その理由を、現場で見た事実とアンケート結果から紐解いていきます。




■ 1. 日本人が思う「日本の魅力」と、海外客の感じ方は全く違う




旅館・民泊の相談で最も多いのが、

「和モダン」「畳」「障子」「木の温かみ」を押し出したいという声です。


しかし、アンケート結果は真逆です。



海外客(特に欧州)は、


  ・本場で食べる日本食(寿司・刺身・ラーメン・餃子)

  ・本物のゲーム・アニメ・フィギュア文化

  ・漫画の中に出てくる景色・路地・建物

  ・シティポップの世界観そのもの


これらを “直接体験しに来ている” のです。



つまり、

日本らしさ=和モダン ではない。



宿側がどれだけ頑張って「和」を演出しても、

海外客の興味とズレていれば意味がありません。




■ 2. いま増えているのは「2〜3人組のリピーター」




団体観光は減り、個人旅行が圧倒的に増えました。

しかも、リピーターほど 価格では動かない。



なぜか?


旅の目的が、

「行きたい場所」

「体験したい世界観」


に移っているからです。



宿は “拠点” ではなく、

作品の一部として泊まる場所 に変わっています。



そして、欧州からの訪日客はこの傾向が特に強い。


良い“物語”を提供する宿に、人は戻ってくるのです。




■ 3. 宿を点々と移動しながら「推し体験」を集める旅が主流に



最近の旅行者は、同じ宿に連泊するより、

興味のあるスポットや体験ごとに宿を変える。



団体旅行でも、現地ではバラバラに動き、

それぞれが “自分の旅” をしている。



つまり、宿に求められるのは

便利さでも広さでもなく、「1泊で記憶に残る何か」 です。





■ 4. “白い箱” が旅館業の未来を変える理由




ゲーム・アニメ・漫画・和風・ファンタジー……

どんな世界観でも、

白い空間こそ最高の舞台装置になる。


プロジェクションマッピングの世界観


白い壁、白い天井、大理石調の白い床。

これさえあれば、あとから


  ・城

  ・神社

  ・夕暮れの街並み

  ・石垣の夜空

  ・雪景色

  ・森林の奥行き

  ・未来都市


どんな“推しの世界観”でも表現できる。


建築は箱でしかない。

価値はその箱に宿る物語で決まる。



この発想を理解している宿は、2026 年以降必ず伸びます。




■ 5. では、宿主は何をすればいいのか




結論はひとつ。


自分の宿を「白い舞台」に整え、

そのあとにクリエイティブに思考する事



世界観は建築ではなく、演出側が決める時代です。


宿主がやるべきは、


“余白をつくること”。

そして、余白は必ず人を惹きつける。



お化け屋敷の看板に人が吸い寄せられるのと同じです。

人には、“見たいものを見る心理” がある。

宿もまた、それを利用すべきです。




■ 6. 2026 年の旅館業は「世界観 × 余白」で勝つ




和モダンは、既に飽和しています。

価格で勝負する時代は終わりました。



これから勝つ宿は、


   ・世界観をつくる余白を持ち

   ・推し体験を設計し

   ・リピーターの “感情” を生む宿


です。



建築は、ただの箱。

その箱に“何を宿すか”が、宿泊業の未来を分けます。





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