近年、25㎡前後の単身者向けアパートでも、
「暮らし心地の良い部屋」を求める声が増えています。
広さは変わらないのに、住みやすさに差が出るのはなぜか。
それは、
“数字ではなく、暮らす人の動き” を基準にして設計しているかどうか。
この視点ひとつで、
同じ25㎡がまったく別の空間になります。
今回は、現場で何度も検証してきた経験から、
“狭さの限界を決めるのは面積ではない” という話を
できるだけやわらかく、分かりやすくお伝えします。
あなたの物件選びや計画の参考になれば幸いです。
25㎡と聞くと、「狭いな」「工夫が必要だな」と感じます。
しかし実際に生活を見ていると、
“狭さ”よりも先に見えてくるものがあります。
それは、
・洗濯物の置き場がなくて動線が止まる
・玄関に物が溜まり、毎朝ものをまたぐ
・バッグやコード類に“戻す場所”がない
・ベッドまわりが物置き場になってしまう
こうした “生活の滞り” が、面積よりも暮らしに影響します。
広さが問題なのではなく、
人の動きが止まる場所が存在すること。
だから私はまず、
「どこで滞るのか」
「どこを通りやすくするか」
そこを一番に見ます。
― 洗濯という“毎日の負担”を軽くする場所
ワンルームで最も生活が乱れるのは、
実は 洗濯物 です。
部屋の中央に干すだけで、
・通れない
・光が遮られる
・湿気がこもる
これだけで生活のリズムが崩れます。
だから、私は25㎡でも
1.5帖の小さなドライルーム をつくります。
大きく見えるかもしれませんが、
洗濯動線がひと続きになるだけで
部屋全体の表情が変わります。
空間の広さは変わらないのに、
人の動きが軽くなる。
住む人が一番驚くのは、
「部屋干ししているのに部屋が散らからない」
という事実です。
ワンルームの玄関は、
想像以上に“物が集まる場所”です。
靴、傘、エコバッグ、掃除機、スーツケース。
置く場所が決まっていないと、玄関は簡単に崩れます。
そこで役に立つのが
小さなSIC(シューズインクローク)。
0.7~1.0帖でも、
人の動きは驚くほど滑らかになります。
玄関を「ただ通る場所」に戻すだけで、
暮らし全体に余白が生まれます。
ここでお伝えしたいのは、
SICを“豪華な収納”と考えるのではなく、
生活の滞りを減らすための場所
という視点です。
最近の住宅研究でも、
「床面積より立体の使われ方が暮らしの満足度を左右する」
というデータがあります。
実際、25㎡でも
・ロフトを“寝るだけの場所”にする
・立体収納で“戻す場所”を決める
・通路を極力まっすぐにする
これだけで、
同じ面積とは思えない暮らしやすさになります。
25㎡でも狭くならない理由は、
設備を詰め込んでいるからではありません。
動きが止まらないように整えているから。
ここが、本当の設計の軸です。
“不便を先に取り除く”という設計思想
私は現場で多く見てきましたが、
狭小空間の失敗は、
・部屋の広さ
・設備の豪華さ
・見た目のデザイン
これらが原因ではありません。
不便を残したまま進めてしまうこと。
生活の中の “小さな滞り” は、
積み重なると大きなストレスになります。
逆に言えば、
不便を静かに無くしていくだけで
住まいは自然と整っていく。
ドライルームも、SICも、ロフトも、
“豪華設備”ではなく、
生活の流れを守るためのピースなのです。
25㎡の限界は、面積では決まりません
25㎡という数字には、
どうしても“狭い”というイメージがつきまといます。
でも、本当の暮らしやすさは
数字ではなく、
・動きが止まらない
・物の居場所が決まっている
・部屋が呼吸している
・自分のリズムが乱れない
この4つで決まります。
ドライルームやSICは、
「贅沢な設備」ではなく
暮らしのリズムを守る装置 です。
25㎡でも、
人が自然と動ける住まいは、
驚くほど心地よくなります。
あなたの住まい選びや計画が、
小さなストレスから解放された、
やわらかい暮らしにつながることを願っています。