家づくりの打ち合わせで“夢がすり減る”理由──それでも、向き合いたいと願う人たちがいる

2025年04月09日 18:02
カテゴリ: コラム

「自由設計ですので、何でもご相談ください」
最初はそう言ってもらえたのに、気づけば…
「それは難しいですね」「こちらの方が無難です」「予算内だとこうなります」

そんなふうに、打ち合わせが進むたびに、
“期待”よりも“現実”ばかりを突きつけられるようになった。

家づくりの相談に訪れた多くの方が、
「楽しみだったはずの時間が、いつの間にか疲れる時間になってしまった」
と語ります。

今回は、そんな“打ち合わせの中で夢がすり減ってしまう理由”と、
実は同じように悩んでいる施工側の葛藤について、
双方の視点からお話してみたいと思います。

■「夢」を語るはずが、「我慢」を選ぶ打ち合わせに変わってしまう


家づくりの初期段階では、施主さんが目を輝かせながら語ってくれます。

・こんなキッチンにしたい
・子どもが走り回れるリビングがいい
・夫婦それぞれの趣味も大切にしたい

けれど、打ち合わせが回数を重ねるごとに、その熱が少しずつ冷めていくような瞬間があります。

「これは難しいですね」
「こちらの方が標準ですから」
「ご予算を考えると、こうなりますね」

そのたびに、施主さんはこう感じるのです。

「あぁ、また“ダメ”なんだ」
「言っても無理かも…」
「もう、これでいいや…」

こうして、“夢を実現する場所”であるはずの打ち合わせが、
“希望を削る作業”になってしまうことがあるのです。

■でも、施工側だって悩んでいる


私は施工側の立場として、現場にも数多く関わってきました。
そこで気づいたのは──
実は、施主さんと同じくらい“施工側も葛藤している”ということです。

設計担当も、現場監督も、営業担当も。
決して冷たくしたいわけではない。
できることなら、もっと希望を叶えてあげたいと思っています。

でも現実には…

・会社の規定がある
・工期や工程の制約がある
・利益優先の構造の中で、柔軟な提案が通らない

何より、「これ以上時間をかけると契約を逃すかもしれない」というプレッシャー。
その中で、自分の理想と現実の板挟みに苦しんでいる人も、本当に多いんです。

■施主も、施工側も、「本気で向き合える相手」を探している


これまで多くの現場に立ち会ってきて、私は確信しています。

施主は「ちゃんと耳を傾けてくれる人」を求めていて、
施工側も「ちゃんと話をしてくれる施主」を求めている。

どちらも、「もっと話を聞いてほしい」「もっと理解してほしい」と思っている。
でもそれが上手く言えなかったり、諦めてしまったりするだけなんです。

本当は、敵対してなんかいない。
ただ、うまく伝え合えていないだけなんです。

■それでも、はっきり言っておきたいことがある


ここまで両者の気持ちに寄り添いながら話してきましたが、
あえて言わせてください。

「丸投げの家づくりでは、後悔が残ります」

「お任せします」だけでは、本当にあなたの理想は実現しません。
逆に、「絶対こうして!」と押し通すだけでも、うまくいきません。

必要なのは、“お互いの言葉に耳を傾ける姿勢”です。

夢を叶えるためには、少しの工夫と譲歩も必要です。
でもその過程を、信頼できる相手と一緒に乗り越えることで、
「自分の家だ」と心から思える場所ができていくのだと思います。

まとめ:夢をすり減らさないために、必要なのは「本音で話せる空気」


家づくりにおいて、一番重要なのは「本音で話せる関係性」です。
価格やデザイン以上に大切なのは、「気持ちをちゃんと聞いてくれるかどうか」。

私は今、家づくりの相談窓口として、耐震リフォームやリノベーション、設計提案を行っていますが、
一番大事にしているのは、技術や知識よりもまず、**“ちゃんと話を聞くこと”**です。

夢を語る場所が、夢を削られる場所になってしまわないように。
そして、施工側も自分の理想を押し殺さずに済むように。

「この人なら、話してもいい」
「この人となら、一緒に考えられる」

そう思える関係性を築けるような出会いが、
家づくりの本当の第一歩だと、私は信じています。

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